現行の学習指導要領で家庭科の目標は、「生活の営みに係る見方・考え方や技術の見方・考え方を働かせ,生活や技術に関する実践的・体験的な活動を通して,よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向けて,生活を工夫し創造する資質・能力」の育成を目指すとなっています。
私の体感だと、教科書に出てくる内容の一部は驚く速さで昔のものになってる気がします。例えば、消費者トラブルの内容。今やネット上で、相手の顔もわからず、電子マネーやクレジットで売買することもあり、問題が複雑化してる。衣服の手入れでも、洗剤や漂白剤とも言い切れない用途のオキシクリーンが大人気だったり、家に集荷に来てくれるクリーニングサービスがある。食材や調理済食品の宅配サービスを利用してる人も多いと思いますが、教科書に最新のサービスが載ることは少ない。その時代の子どもが体験しているような、実践的、体験的な活動を扱う教材を時代に合わせてどんどん変えていくことが求められる。これからもどんどん新しいサービスや技術が生まれ、それらを適切に扱う力が求められるでしょう。こんな教化他にないのでは。毎年同じ教材で乗り切れる教科と違い、教える側としてはとっても大変なんです。
だからって、最新のものがわかり、新しい物を取り入れるだけでは家庭科が目標とするよい生活者とは言えないですよね。新しいサービスや商品、技術が、自分のよりよい生活を実現するものなのか、持続可能な社会を構築するものなのかがわかり、適切に選択、創造できる生活者を育てることが目標なんですよね。
そのあたりが、年配の家庭科の先生は自分の生活経験だけでは教えられない部分がある時代になっているのでは。一方若手は若手で、衣食住や子育ての経験は年数的に短いこともあり、まだ経験的に知らないことも多い気がします。そんな中で家庭科の目標を達成させるのは難しいと感じていました。
年々子どもたちの調理や裁縫など生活技能は落ちていて、教員同士では危機感を持っていました。ガスコンロで火が付けられない。お金のやり取りができない。でも保護者の方はそういう危機意識はあまりなく、勉強の成績に興味があるようで、塾に通わせるのが最優先。家庭でも、より良い生活を創造して、受け継ぐことができてる人は少ないんじゃないかと思うと、将来、健康的に自立して生活できるのかとても心配です。私の周りだけだといいですが。
そんな中で、普遍的、根源的で応用がきく知識や技能を教えることが、本当に大切だなと思いました。
ポイントは『よりよい生活の実現や持続可能な社会の構築に向かってるか』だと思います。「その時楽で、安くて、自分だけよければ」ではないこと教えないと、結果的に自分の首を絞めることになることを知る。自分の未来や、環境、一緒に生きる人達のことを考えることが、ながーく幸せに生活できることに繋がってると思います。
そのポイントを押さえ、適切に必要なものをチョイスできる力が必要。そのためには正しい知識やITリタラシー、基本的な技能などが必要だと思う。そして、それらを元に、知識を活用したり、新たに適切なものを選択したり、応用していくことが一生必要なのだと。
うちの親はネットが使えないから、ライフラインの内容変更もできないし、市役所の書類も取れないし、生活できない~ってパニクってます。たしかに、Uber Eatsや宅配クリーニングの依頼、ネットバンク、オンラインショッピング、、なんでも便利なサービスはネットです。生活にITリタラシーが不可欠な時代になっています。それであたふたする親世代をよく見るのですが、一方で祖父は全然パニくらず、孫にやり方を聞いてオンラインショッピングをしたり、野菜作りを楽しんだり、便利な調理器具を買って料理を楽にしたりして老後を楽しく快適に、自立して健康的に過ごしていました。
この親世代と祖父母世代の違いに、家庭科の目指す力をみるようでした。何が祖父母世代の生活創造能力を育て、親世代のそれを見失わせたのか。とっても興味深い私です。
自立と共生を大きな目標にする家庭科。この科目の未来が日本の未来を変えるのではと本気で思うのです。